Q1.0住宅都賀 温熱環境まとめ(セミナーレベル)

本日は、同業者向けへ今までの投稿のまとめで

Q1.0住宅の温熱環境の調査報告を致します。

 

途中まで今までの投稿したブログの写真など、同じです。

全体的に一般の方向けの投稿ではないため、各ブログで書いた細かい解説は載せていません。

 

まずは、QPEX表での数値です。

 

外観です

↑南側は日射取得率74%の窓が並びます。

 

室内です

リビング&ゴロゴロスペース
八溝杉のフローリングが美しい・・・
子供室
将来二つに分かれます。
キッチン
造作のカップボードが素敵ですね
ランドリースペース(洗面所)
造作の洗面台です。
寝室の方に一直線に抜けます。

ドアは目隠しのような意味合いで、こちらもリビング&キッチン側が一直線に抜けます。
寝室

左端のところに測定器が置いてあります。
併設してWICがあります。
造作です。棚に測定器があります。

こちらも、ランドリースペースと外が一直線に抜けます。
地下
夢の地下空間です。
玄関

 

続いて、ケストレルを用いての調査です。
ちょっと初めに去年竣工したQ1.0住宅粟野の状況からみていきます。

外気(※Q1.0住宅粟野) 2019年8/4日
外気温33.5℃
相対湿度70.4%
絶対湿度23.73g/kg一応かみ砕いて解説するけど、
相対湿度とは、温湿度計で皆さんがよく口にする「湿度」の%のことです。
絶対湿度というのは、33.5℃という空気が持っている水分量だとイメージしてください。
難しい言い方をすると、乾いた空気1kgに対する水蒸気の量です。

もう一度相対湿度に戻りますが、33.5℃の外気温に対して、湿度100%となると、絶対湿度は33.5g/kgとなります。

つまり、33.5℃という外気温で23.73gの水分を空気が含んでいると、湿度は70.4%ですよ!ってこと。

なので、ジメジメとかいうのは、絶対湿度で見る方が分かりやすい。

絶対湿度は、室内では20gもあったらすごいジメジメする感じです。
よく高気密高断熱の家では12g/kg以下を目標にされたりしますよね。
室内(※Q1.0住宅粟野) 2019年8/4日
室温24.1℃
相対湿度55.4%
絶対湿度10.59g/kgものすごく快適な環境といえます。

 



続いて、サーモカメラの状況です。

とっても一定温度なのが分かります。

リビング(床)
表面温度23.2℃

表面温度23.3℃


表面温度22.1℃
リビング(勾配天井 高い部分)
表面温度23.2℃
リビング(天井 低い部分)
表面温度22.8℃
リビング(窓際)
表面温度27.1℃日射取得タイプだから、少し表面温度が高くなるのは当たり前だけど、真っ赤ではなく、オレンジ色しているので、急激な温度差はない。
キッチン(壁)
表面温度22.3℃
キッチン内廊下(壁)
表面温度22.4℃
子供室(床)
表面温度20.5℃
子供室(壁)
表面温度20.8℃
子供室(天井)
表面温度20.9℃
地下(床)
表面温度20.9℃
地下(壁)
表面温度20.9℃
地下(天井)
表面温度22.0℃
玄関(床)
表面温度20.1℃
玄関(ドア)
表面温度23.1℃
玄関ドア枠
表面温度28.8℃
寝室(床 +250部分)
表面温度21.6℃
寝室(壁 +250部分)
表面温度22.6℃
寝室(床 ±0部分)
表面温度21.1℃
寝室(ウォークイン側 壁部分)
表面温度21.6℃
トイレ
表面温度22.1℃

 

続いて、床下の調査です。

 

まずは、床下のケストレスの調査です。

室温:23.7℃
相対湿度:62.3%
絶対湿度:11.48g/kg
左のものは、含水計です。木材の水分量の調査もしています。
室温:23.7℃
相対湿度:61.8%
絶対湿度:11.40g/kg
ここもあまり変わらないですね~
室温:22.8℃
相対湿度:61.7%
絶対湿度:10.77g/kg
ここはエアコンの風が少し当たっている所なので、若干空気温度が低いですね。でも、絶対湿度は12g以下なのでOKです。
室温:23.6℃
相対湿度:61.2%
絶対湿度:11.19g/kg
どこの場所か全く覚えていませんが、絶対湿度はいい感じ
室温:23.9℃
相対湿度:62.4%
絶対湿度:11.65g/kg
ここも絶対湿度11g台ですね
室温:23.5℃
相対湿度:60.8%
絶対湿度:11.08g/kg
何だかケストレス(測定器)が取り残された子犬の感じ(笑)
室温:23.6℃
相対湿度:59.3%
絶対湿度:10.89g/kg
ネオマフォームが施工されているので、外周部ってことです。
ここでは絶対湿度10g台です。
室温:18.1℃
相対湿度:78.3%
絶対湿度:9.54g/kg
エアコンから一番近い空間内です。
絶対湿度は9g台です。とってもエネルギーを食う「除湿モード」なんて必要ないのがラファエル設計の空調設計です。

 

 

続いて、床下のサーモカメラ状況です。

エアコン設定温度30℃(暖房)
設定温度は高くしないとエアコン止まってしまうので、調査のために高く設定しています。

下記画像で注目してほしいのは、床下に噴出された暖房の暖気が、コンクリ―トに蓄熱されることなく、床面付近を27~30℃で這っているということ。
これにより、冬は床暖房を入れなくても、暖房設定温度20℃で、床面は20℃前後の表面温度を目指せるということを示しています。

寝室の床下の床材下地合板なんて31.4℃ですよ?

コンクリート面は低くても24.8℃冬はどうなるかな~
エアコン設定温度25℃(冷房)
青くなっている所は基本的にネオマフォームの断熱材です。
断熱材が青いのは良いことです。
冷房をつけているけど、青くなっているのは断熱材の部分だけなんです。


表面温度21.4~25.5℃
↓青くなっているのは冷房の風を当たっている部分です これらを見て、スラブ面が真っ青になっていないので、冷気は基礎コンクリートに落ちていないということが分かります。


ラファエル設計の基礎は、人通口がないので、冷気が滞るとスラブの下面が真っ青になるはずです。↓このように。
こうなると、カビの危険性が出てきますよね。これは暖房時のサーモ画像なのですが、冷房がきちんと床上に吹き出ないと、冷房時はこのような画像になってしまうのですが、なっていないですよね?

これは、床下空間と床上空間が、きちんと「正圧と負圧」の関係になっているからです。

どっちが正圧かって?

床下が正圧
床上が負圧
です。

これがしっかりできると、空気は少しの隙間でも、そこをめがけて吹き抜けています。


このサーモカメラは42万円です。
このサーモカメラを使って、施工が甘いところも見つけることができます。

こうした調査を一通り済ませて、引き渡しを迎えます。

 


  • 引き渡し後

ここからは、引き渡し後の室温状況を見ていきたいと思います。

下記で測定位置などを解説していきます。

リビング
SAというのは床ガラリ、
RAというのが天井にあるガラリで、ようは穴が開いているだけです。
↓天井には「サージカルマスク」が吸い付くほどの吸引力です。
キッチン
キッチン側とキッチン前の測定器の位置です。

下記はSAの吹き出し用のガラリの風量測定の様子です。600m3/hくらいの風量です。
それがどれくらいか?というと、扇風機やエアコンの「強」運転以上の風の強さです。

写真左側のニッチの下(床付近の吹き出しガラリの様子)こちらは換気くらいの風量で、23m3/hです。
子供室

測定器はクローゼットの中の枕棚にあります。ドアは締め切りです。こちらもSAからは22m3/h程度の風量が出ています。
洗面所
測定器はカウンターの上にあります。

床のRAのみダクトで24時間換気に接続されています。
トイレ
測定器は、見えないですが、壁掛けペーパーBOXの上にあります。
寝室&WIC
WICってのは、ウォークインクロ―ゼットのことを言います。
WICは可動棚の部分、寝室は床面に置いています。
地下
玄関
赤矢印の位置に測定器があります。
玄関はSAもRAもありませんが、室温一緒です。

はい、こんな感じで測定器は置いています。

 

では、室温と湿度などを見てみましょう。

8/20日 12:51分 室温&湿度
外気温が37.4℃とこの日で一番高い時間を見ていきます。
左の室温とか、棒グラフは、12:51分の時のものを表示しています。寝室の床面付近は、下にエアコンが設置してあるので少し温度が低くなり、比較対象にするわけにはいかないので、
この時間一番室温が高い「リビング」と、一番室温が低い「WIC」を比べると・・・
25.4℃と23.8℃で1.6℃の差です。

ちなみに、この時のエアコン設定温度は25℃です。
日中で、下記のように日射遮蔽のブラインドなど設置されていない状態なのですが、設定温度より0.4℃くらいUPしているけど、何ら「何か?」って感じ。
この時の絶対湿度を見ていく。
8/20日 12:51分 絶対湿度
パッシブハウスの審査では確か絶対湿度は12g/kg以下だったはず。
単位がg/m3の方ではないです。
8と9番の床下はエアコンの影響を一番受けやすいので、室温も一番低いですよね。
室温低いと、相対湿度は高くなりますので、こういった場合は絶対湿度で見ていきます。

次に、この日一番リビングの室温が上がったのを見ていきたいと思います。
8/20日 15:50分 室温&湿度
説明項目3が入ります。
8/20日 15:50分 絶対湿度
当然、日射遮蔽ができていないので、リビングとかキッチン前など、室温が上がります。その分、相対湿度は下がっているのが分かりますか?絶対湿度も0.2~0.4℃のプラスマイナスが起きていますが、体感できるような違いではありません。

次に、次の日の8/21の様子を朝から見てみましょう
8/21日 AM4:51分 湿度
外の湿度は82%もあります。
でも、左の室温を見てみると、地下とか床下以外はほぼ同じ室温です。設定温度マイナス1.3℃前後になっていますね。

絶対湿度の方でも見てみましょう。
8/21日 4:51分 絶対湿度

外気に左右されていないことが分かります。
外の絶対湿度は16.8g/kg
外気温24.8℃で湿度85%ですから、じめっとしている。

次に9時11分の外気34℃にもなっている時間帯を見てみよう。
8/21日 9:11分 室温&湿度
外気温が34.7℃ですが、室温は大して変わっていないことがわかります。
左の室温とか、棒グラフは、9:11分の時のものを表示しています。

次にこの時の絶対湿度を見てみましょう
8/21日 9:11分 絶対湿度

外気が強烈ですよね。
注目なのは4~6です。
  • 4洗面所は室温が0.3℃ UPで絶対湿度が0.9g減っている
  • 5リビングは室温が0.2℃ UPで絶対湿度が0.8g減っている
  • 6リビングは室温が0.2℃ UPで絶対湿度が0.7g減っている
これは、太陽によって空気が暖められて、水分量を減らしていることを意味している。

次に17時までを見てみよう
8/21日 12:00分 絶対湿度
8/21日 15:30分 絶対湿度
8/21日 17:00分 絶対湿度


エアコン設定温度25℃では、絶対湿度は大体10g/kg台という事がわかりました。


次にエアコン設定温度を26℃に18:00時から変更しました。
8/22日 4:51分 室温&湿度
右下のグラフは22日の1日のグラフを示しています。
エアコン設定温度は26℃です。
8/22日 4:51分 絶対湿度
8/22日 9:11分 室温&湿度
8/22日 9:11分 絶対湿度
8/22日 15:00分 絶対湿度

はい、こんな感じです。
エアコン設定温度26度にすると、室温も当然上がっていますが、25℃設定時と同じように、日射がガンガン当たる時間帯は設定温度+2℃くらいに納まっています。
絶対湿度としても、10~11g/kgといったように、12g以下で納まっています。

次に、日射がきちんと入った場合、再熱除湿のような考えになることを改めて表にしてみました。
8/22日、9:11分から15:00においての湿度の変化


ここまで湿度が下がるのは、25℃の時には見受けられなかった。
つまり、エアコン設定温度26℃の場合、いい感じに太陽が除湿をしてくれることがわかる。

ラファエル設計が目指す室温環境の一つに、住まい手がエアコン設定温度によって湿度を調節できるという所がある。

次に、パ~~っと日別の室温状況をUPします。
最高気温の時の状況を示していきます。
8/23日 12:51
8/24 14:41
8/25 13:41
8/26 13:31

いかがでしょうか?

室温の横線グラフはほとんど同じような動きをしていると思います。

日射遮蔽ができていない状態ですので、12時以降、室温は上昇していっていますが、エアコン設定温度の2℃以内ではほとんど納まっています。

 

エアコンのモニターで消費電力を見ると、だいたい1日4~6KW。

25円/kwで計算すると、100円~150円が1日のエアコンの使用料。

 

これが、「エアコンを贅沢につかってくれ!」と住まい手に提案したいQ1.0住宅なのです。

とにかく、夏は室温が低くても湿度を強く感じると「じめっ」としか不快感が発生します。

 

冷房を床から吹き出すなんて馬鹿と陰口たたかれていると思いますが、サーモカメラを見てもわかるように、冷気が悪さをするような冷気の滞留は見当たりません。

 

今回の家は平屋の28坪です。

14帖のエアコン1台でこれだけの空間を実現することに成功しました。

冷気というのは重いので、基本高いところから落とすのですが、思ったように冷気は動きません。

つまり、冷気は引っ張ってやって、それをACへリターンすることが重要です。

 

とりあえず・・・

冷気を天井で引っ張り上げるという基本とは真逆の考えを、成功できましたので、冷気は高いところから落とすというセオリーを、覆してやれたと思います。

青線が「冷気」と「換気&還気」の流れです。

これを、設計で狙った通りに行うために必要なのが「気密」です。

 

そして・・・

日射熱の影響を、カーテンやブラインドもないのに、エアコン設定温度+2℃以内に抑えているのが、さっきの気密に加えて「断熱」です。

日射を冷気が冷ましていると考えています。

 

つまり・・・

高額な外付けブラインドとか、ラファエル設計においては、特別必須ではないという事。

 

これが、本当の「高気密高断熱」であり、高気密高断熱でないと、こういった事ができません。

それは、
UA値がいくつ?とか、
Q値がいくつ?とか・・・

「性能値」で生み出されるものではありません。

すべての窓を木製サッシにしてUA値を良くしたところで、このようにはなりません。

 

高性能住宅を作るのは住まい手に取ってよいことだけど、快適な空間にするために、住まい手が特別な面倒な設備の設定をしていたら、それこそストレスです。

ラファエル設計は、エアコン設定温度26℃前後にするだけで、夏の湿度の調整・除湿を行えることができる環境を目指しています。

2020年08月26日