換気システムの種類とメリットデメリット

今日は最近質問メールでも多い、換気システムの種類とメリット、デメリットをご紹介したいと思います。

換気システムの話は、建築士の試験でもよく出題される問題です。

 

少し前、お客様が「この工務店を使ってくれ」というので、工務店社長様と面談を行い、普段使用している換気システムについて質問しました。

僕:「第1種と3種、どちらが多いですか?」


社長:「何ですか?それ?」

僕:

 

プロでも知らない換気設備・・・

では、解説していきたいと思います。

 

  • 何故換気が必要なの?

基本的に、今回の換気の話は「24時間換気」についてです。

建築基準法の改正により、2003年7月1日以降に着工する建物に、内装の仕上げなどに制約が課されるなどシックハウス対策が義務づけられました。

 

下記の図のように、家には化学物質を発生させる要因が色んな所にあります。

(出典:PANASONIC)

これによって・・・
下記の様な症状が出てきます。

 

これを改善させるべく「24時間換気」が必要になったわけですね。

 

  • 換気設備の種類

 

1種換気
給気:機械
排気:機械
2種換気
給気:機械
排気:自然排気
3種換気(住宅に一番多い)
給気:自然給気
排気:機械

図にするとこんな感じです。

 

 

  • 換気設備の選定用途

 

初めに、正圧と負圧を知りましょう!

正圧
飲み終わった紙パックのジュースを吸うのではなく、息を吹き込んでパンパンにしたような状態を正圧といいます。
負圧
飲み終わった紙パックのジュースを吸うとへこみますよね。
この状態を負圧といいます。

給気口を閉じて、キッチンの換気扇を回すと、もの凄い負圧に室内がなります。

そうすると、開けっ放しの室内のドアが勢いよく閉じたり、キッチンの排水溝から異音がしたり、コンセントBOXからヒューヒュー音がしたり・・・
不具合が生じます。

IHにすれば、給気口が不要とか言うハウスメーカーの営業さんいますが・・・

IHかガスかで、給気口150φが不要になる訳ではありませんからね。

 

では、用途選定について解説します。

1種換気(高気密住宅や、屋内駐車場)
給気:機械
排気:機械

室内を負圧(―)にも正圧(+)にもする事ができ、室内気流も簡単調節できます。
最も完全な方式となります。

住宅で言えば、ダクト式の換気設備の場合、これに該当すると思います。
2種換気(クリーンルーム、ボイラー室)
給気:機械
排気:自然排気

室内は正圧になります。

正圧になると、外部からの汚染物質の流入を防ぐことが出来るので、クリーンルームに適しており、ボイラー室は、燃焼用の空気が狙ったように必要ですので、機械で強制的に安定的な給気をさせるわけです。
3種換気(住宅に一番多い)
給気:自然給気
排気:機械

室内が負圧に保たれるので、その室内で発生した臭いや水蒸気を周囲に漏らしたくないトイレや厨房、浴室などに適しています。

一番安価な為、住宅で一番、当たり前のように採用されている方式です。

 

  • 換気設備のメリット&デメリット

住宅に限っての説明にするので、1種と3種に絞ってお話致します。

1種換気(高気密住宅や、屋内駐車場)
給気:機械
排気:機械

【メリット】
換気が一番確実

【デメリット】
フィルターの清掃が定期的に出来ない人は、採用すべきではない方式。
ダクトだらけになるので、ダクト計画をしっかり出来ない住宅会社が単純な考えで採用すると、梁に穴開けないとダクトが通らないとか、最悪な欠陥住宅が出来上がる。
3種換気(住宅に一番多い)
給気:自然給気
排気:機械

【メリット】
一番安価でコストパフォーマンスがよい

【デメリット】
ハウスメーカーをはじめ、日本の家は現代も新築でも寒い家が当たり前なので、給気口を閉じてしまう家が殆ど。
それによって、換気不足が生じてしまう。24時間換気が機能しない。
ハウスメーカーは恐らく、トイレと洗面所を機械排気ファンを付ける優先順位を高くする。
その為、洗面所で24時間換気が動いていると、冬は恐ろしく寒くなる。
なので、給気口を閉じている家が殆どではないだろうか?

こういうのも、温熱欠陥住宅の一種です。
  • 熱交換換気

熱交換とは外気と内気を交換するものです。
その為、室温が急激に下がる事がありません。
イメージすると下図のような仕組みです。

(出典:PANASONIC)

ようは、換気をすると・・

冬であれば、室内の暖かい熱を、一緒に排出してしまうのです。

 

つまり、室内温度の観点から言えば、1種も3種も室内の暖かさを保てる設備ではないという事です。

そこで、「熱交換」のアイテムが必要になってくるわけです。

※建築知識ビルダーズ36号の連載1回目で実際にシミュレーションした結果を踏まえてそれを書いています。

 

熱交換には2種類あります。

  温度 湿度
全熱交換
(温度と湿度を交換)
安定的になる。
【夏】は外の湿気を取り入れない。
【冬】は室内の熱を持った湿度を室内に戻す
顕熱交換
(温度のみを交換)
安定的になる。 夏も冬も室内の湿気を排出

ここで、「臭い」や「ウイルス」の話も入れるのは止めておきます。

メーカーによって、顕熱交換推しのメーカーは・・・
「全熱交換は、臭いとか室内に戻してしまう」

とかいいますが、お前の家、どんだけくせ~のよ!?って感じですよね(笑)

高気密高断熱ほどというか、エアコンの暖房を使えば使うほど、乾燥します。

ラファエル設計はどちらを使うのか?

考えてみてください(笑)

 

  • 換気についての質問

よく、ラファエル設計さんは換気の種類とメーカーは何処を使ってますか?

なんて質問きたりしますが・・・

それを聞いてどうなるの?

って正直思います。

特にメーカーとかさ。

 

質問の意図が分かりません。

 

ネットで、「高気密高断熱の家に第3種はあり得ない」

なんてことを見て、高気密高断熱をうたう住宅会社で、3種換気を選定している所はふるいに落とすのでしょうか?

その為の質問なのでしょうか?

それとも、ネットで勉強して、熱交換採用すれば、部屋が暖かい、若しくは暖房の代わりになると思っているのでしょうか?

 

基本的に、熱交換が不要で室温シミュレーションして、日射取得でオーバーヒートするくらいに暖かい家になるならば、結局窓を開けると思いますので、熱交換は必要ないと思います。

夏、外気の湿度を入れないとか言っても、多湿で暑いのは熱交換でどうにかなる問題じゃないですよ(笑)

そもそも、エアコンのフィルター掃除が1年とか出来ない人は、熱交換とか第1種を選ぶ資格はないと思った方がいいです。

おとなしく、3種換気を選んでください。

換気不足で色々な障害が生じます。

運転したら必ず何処かぶつけたり、こすったりするようなペーパードライバーの人が、フェラーリ運転するようなものです。

 

換気計画については、1種にすれば大丈夫とか、3種にしたら問題かな?

っていうより、まず、設計者の換気計画に、すべてはかかっています。

そして、それを維持するのは住まい手です。

 

先日も「高気密よりも低気密が好き」という住宅会社の社長に出逢いましたが、何故高気密が必要なのだと思います?

 

それを次で説明致します。

 

  • 気密性能と換気と結露関係

日本の家は、ハウスメーカー含めて、気密は基本的に悪いです。

高気密が必要な理由は、「換気経路の確実性」の為です。

つまり、低気密が好きという会社、ハウスメーカー達の家は、低気密です。

3種換気の場合、各居室から給気して、トイレや洗面所で機械排気するというものですが、隙間風とかでその換気経路は邪魔される訳ですよ。

つまり、換気が上手く働かずに、冬は加湿器つけて、窓がビチャビチャ結露するという黄金ルートをたどる訳ですね。

 

もう一度言います。

温かさの為の高気密ではありません。

換気の為の高気密です。

 

つまり、ハウスメーカーとかで低気密の家を建てる人は、熱交換1種とか3種とか、気にしても時間の無駄という事です。

だって、換気がうまくされる可能性が低いのですから。

そして、熱交換入れたって、暖気ダダ漏れです。

普通に安い3種にした方が賢明ですが、結露は防ぎようがないと思いますよ。

 

これは窓にも言える事で、樹脂窓にしたら結露が起きないのか?

全ては換気です(笑)

 

気密性能値はこちらをご覧ください。

C値(相当隙間面積)ラファエル設計はC値0.3前後です。
※気密性能を表します。
家全体の隙間を表します。

数値が小さい方が高性能です。

C値1.0というのは
1㎠/m²
となります。
床面積1m²につき1の隙間があるという事です。

ハガキに例えます。
ハガキというのは10cm×14.8cmです。

面積にすると148㎠になりますね。

家の床面積が148㎡(44.8坪)でC値1.0なら、その家は隙間を合計すると、
ハガキ1枚分の隙間があるという事です。

C値が0.5なら、半分となりますのでハガキ半分の隙間という事になります。

ただ、勘違いしてはいけないのが、このC値は『家全体』の隙間であるという事。

窓の気密性能だったり、ドアのカギ穴だったり、そういった所にも影響されるのがC値です。

個人的に、C値が1.0以下であれば、0.5でも1.0でも、それほど室温に影響するとは思っていません。

この前聞いた話では、有名ハウスメーカーのC値は2.6だったそうです。

 

  • まとめ

換気をかなり気にしている人もいますが、家というのは「バランス」です。

高断熱・高気密・換気

という全てを、同時に考えなくてはなりません。

Q1.0住宅粟野では、1Fトイレに換気扇はありません。
床のガラリで床下を換気経路に使っています。
ここで、熱の損失を1つ潰します。

換気は大谷石の蓄熱槽を必ず通すようにして、空気もキレイに消臭する効果も与えています。

換気は全熱交換です。

 

過乾燥にならない設計の為にはどうすればいいか?

住まい手が大変な思いをしないですむ換気方式は?

 

ハッキリ言って、換気システムを1種の熱交換にすればそこは優れた会社か?

と判断するのはナンセンスです。

 

つまり、ラファエル設計以外で家を建てるなら、僕に換気システムは何がいいのか?なんて聞かれても、これまで述べてきた考えが頭にあるので、回答に困る訳ですね(笑)

だって、依頼しようとしている会社の仕様、分かりませんし・・・。

 

1種がいいか3種がいいか?の2択じゃないんですよ。

僕の設計は、そういうものです。

 

ネットで集めてきた知識で家づくりが出来たら、僕の様な建築士は不要なんですよ。

ネットじゃ集められない知識を持って、依頼者の為の家を設計する為に僕がいるわけです。

そこに、設計料というお金をいただくわけですね。

何か特別な換気システムや断熱を考えるのが、僕の存在意義ではなく、

単純に、冬暖かく夏涼しい、住ま手が快適に過ごせる家を、安心して任せられるという自信がありますので、それを求めてくれる方にとってが、僕の存在意義です。

 

最後に簡単にまとめます。

換気種別のメリット、デメリットを追求してもいい家が出来る訳ではありませんよ!

そして、ウイルスがどうとか、臭いがどうとか考えるよりも・・・
全ては住まい手が、きちんとメンテナンス出来るか?
が一番重要です。

2019年06月02日